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Channel: 製造業品質改善の進め方 高崎ものづくり技術研究所Blog
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「本質対策」と「モグラたたき対策」の違いを正しく説明できますか?

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工場で不具合が発生したとき、「本質対策」を行わずに、 起こった表面上の現象
に対して対策を立てることを「モグラたたき」の対策と言います。そして、誰もが
モグラたたきでは駄目ということは分かっています。

しかし、いざ「本質対策」と「モグラたたき」対策の内容の違いは?と問われると
はっきり答えられないのではないでしょうか。



本質を見極めよ!とよく言われますが、本質とは一体何でしょうか?
分かり易くするために、本質を原理・原則に置き換えて考えて見ます。

 本質=原理+原則

■原理とは
製造業の世界では、材料を価値ある形や性質に変え、魅力ある製品を作り上げること
を目的として活動を行っています。
そこで、価値ある形や性質に変えるためには、自然科学の法則に従って材料を加工
したり、部品を組み立てたりして製品を作り上げます。もし自然科学の法則に従わ
なかったなら製品作り上げることはできません。

例えば、ネジ締め力が弱かったら、振動に耐えられずにネジは外れてしまいます。
つまり、ねじの締結力と振動の力との関係でどちらが大きいかによって、物理現象
が異なります。このことは、測定や実験、観察などによって理論付けられ、説明
することができます。

自然界で起こる現象は、ほとんどすべて、自然科学の原理(メカニズム)によって
その原因と結果、つまり因果関係が説明できます。

■原則とは
次に、魅力ある製品を作り続けていくための企業活動に注目します。
多くの人や設備などが関わってものづくりを行うには、一定のルールのもとに活動
を行わなければなりません。

江戸時代以前から行われていた、簡単な道具を使って、主に手先で物品を製造する
いわゆる「手工業」では、農機具など職人の「熟練の技」に委ねられていました。
手工業の時代にも職人の頭の中には一定のルール(原則)に従ってものづくりが
行われていましたが、原理を身をもって体験し、ものづくりの原則を作り上げて来た
のだと考えらえます。

しかし、大量生産が行われる近代的な工場となった現在、同じものを大量に、しかも
安い価格で提供する必要が生じたため、多くの人、設備を効率よく管理するための
原則(ルール)が生まれました。それが生産管理であり、品質管理となって体系化
されたのです。

そうすると、納期が守られなかったり、品質にばらつきが出る原因は、この原則が
守られなかったためと考えることができます。

■本質を見極めるとは、原理・原則を見極めること
品質問題を考える場合、原理と原則を分けて考えると混乱が無くなります。
 ①自然科学の原理に基づいた原因と結果
  例)締付力が弱い(原因)⇒ 振動でねじが緩む(結果)

 ②管理の原則に基づいた原因と結果
  例)ネジ締め作業者はルールを守らなかった(原因)⇒ 締結力が弱い(結果)

ものづくりの本質は、自然科学の原理に逆らわないこと、そして一定の原則(ルール)
に従った手順通りに運用することに外なりません。

不具合は、原則(ルール)に従わずにものづくりを行った結果、自然科学の原理
(メカニズム)によって発生している現象と考えられます

■本質対策とは
本質対策とは、この原理と原則の事実を良く調べ、両方に対策を施すことを言います。
原理だけ、原則だけの対策では不十分となってしまい、同じ問題が再発することに
なります。
 ①原理の対策
  例)締付力が弱い(原因)⇒ 締付が弱くなった原因の対策
                ・既定の締付トルクが得られるドライバの選定
                ・作業者がルールを守るようにネジ締め作業訓練
                ・ねじ締作業方法(固定冶具など)の改善
 ②原則の対策
  例)作業者がルールを守らなかった、守れなかった(原因) ⇒ ルールを守る対策
                ・ドライバ、固定冶具など生産前事前準備確認ルール
                ・ネジ締め作業の訓練計画、実施と作業認定ルール
                ・正しい作業を実施しているか、職場巡回確認ルール

①の対策は、自然科学の原理に沿った物理的、ソフト的な対策です。
②の対策は、管理の原則に沿ったルールの対策です。

①②の対策のどちらが欠けても、再発防止はできません。
よくある間違いは、①を本質対策と勘違いしているケースです。

原理と原則の原因を解明し、原理と原則の両方を対策することではじめて再発防止が
図れることになります。

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